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セフィロートとアルファベットの瞑想

中世にはスペインを中心にして、ユダヤ神秘主義のカバラの新しい思想、新しい瞑想法が生まれました。
その一つが、モーゼス・デ・レオンが書いた『ゾーハル』に代表される、セフィロートの「生命の樹」の象徴体系に関する観想法です。
もう一つは、アブラハム・アブラフィアに代表されるヘブライ文字と神名に関わる観想法です。
具体的な方法はあまり分からないのですが、概要的な説明で紹介します。

「生命の樹」の観想は、10のセフィロートの象徴体系を基にしています。
ブライ文字の瞑想は、22のアルファベットの象徴体系を基にしています。
神名の瞑想は、その4文字を基にしています。
いずれの瞑想法も、その象徴体系を世界と精神の原型として理解し、それを利用して至高の存在にまで戻ろうとします。

<セフィロートの観想>

セフィロートの象徴体系は、紀元前後からありましたが、「生命の樹」として現在につながる象徴体系が作られたのは、『ゾハール』が著された中世だと思われます。
「生命の樹」の象徴体系は、純粋な観想以外に、魔術的な使用や、イニシエーション的な夢見の技術としても利用されたでしょう。

フィロートの観想法にも様々な方法があったようです。
『ゾハール』によれば、その著者として仮託された伝説的な人物であるラビ・シメオンは、多数の方法でセフィロートの観想を行ったとされます。

各セフィラの象徴の瞑想はもちろんですが、身体に「生命の樹」のセフィロートを対応させ、光の観想と共に気をコントロールすることも行われましたようです。

こういった観想法の多くは、ゴールデン・ドーンの魔術にも引き継がれているようです。
ゴールデン・ドーンの観想法は「中央の柱」、夢見の技術は「パスワーキング」で紹介しましたので、ここでは、ゴールデン・ドーンには見られない方法を簡単に紹介します。

その一つは、「生命の樹」を照らす「踊る光」の観想で、次のように観想します。
観想は、多くの場合、両膝の間に頭を入れて座るという、伝統的な方法を使っていると思われます。

まず、各セフィロートがそれぞれの色で発光しながら脈打ちます。
次に、各セフィロートが、それぞれの聖なる文字とともに輝きます。
そして、各セフィロートがそれと象徴的に照応する金属、惑星、天使、肉体の部分を照らします。

次に、各セフィロートの光が様々に移動します。 
左側のセフィロートの光が上昇し、右側が下降します。

また、各セフィロートの光が分裂したり融合したりします。
2つのセフィロートからそれらを統一するセフィラが生まれて3つが融合し、そこから多数の色彩を流出します。
6つの光が下降して12に分かれ、22に分かれ、また、10に、6に、1つに融合します。

これらのプロセスで、各セフィロートの象徴の間の動的な関連を理解します。
また、ユダヤ教は基本的に現世肯定的なので、精神を至高の存在、至高のセフィラまで上昇させても、最終的には、その光を物質界にも引き下ろすと考えます。

また、他の方法では、各セフィロートを「生命の樹」の形としてだけではなく、玉ねぎのように多重構造を持ったものとして、つまり、下位のセフィロートが順次回りを包んでいると観想します。
あるいは、それぞれのセフィラがさらに10の光で出来ているとも観想します。


<文字置換の瞑想>

次に、ヘブライ文字の置換法を使ったに観想法です。
これらの方法を使った修行を「天の門」と呼ぶこともあります。

ヘブライ文字は、本来、子音のみで、22文字あります。
また、ローマ数字がラテン文字を使う(I=1、V=5、X=10…)のと同じで、各文字は数字としても使用されます。

文字置換法としては、「ゲマトリア」、「ノタリコン」、「テムラー」が知られています。
「ゲマトリア」は、単語や文章を数値に置き換え、さらにまた文字に置き換えます。
同じ数値をもった単語同士は、霊的次元から見れば同じ意味であって、それぞれを暗示し合うと考えます。
「ノタリコン」は文章を作る各単語の頭文字をとって一つの単語としたり、その反対の作業を行います。
「テムラー」は、一定の方法で、特定の文字を特定の文字に置き換えます。
これらの方法によって、主に聖書に書かれた文章などの隠れた意味を見出そうとします。

ただ、そういった置換法の実践には、瞑想法という側面もあります。
一定の方法によるコントロールのもとで変性意識状態に入りながら置換を行うと、徐々に無意識的に「自動筆記」のような形で自動的に行われるようになります。
また、心臓に白熱する感覚が生まれますが、これを「聖なる流入」と呼びます。

この時、天使が現れて作業を助けてくれるヴィジョンを見ることも多いようです。
また、意図的に自分を諸天使として観想することも行います。

この作業を通して、単語や文章の背後にある、特定の数値や、各アルファベットの象徴的意味を直観するようになります。

また、22のアルファベットは、セフィロートのように、それぞれ肉体の各部位に配置して念じることも行われました。


<神名発声の瞑想>

次に、神名の発声の瞑想法です。
これは「聖者の門」、「内なる門」とも呼ばれます。

ユダヤ教では神の名前は「テトラグラマトン」と呼ばれる4文字で表されてきました。
英語のアルファベット表記では「YHVH」になります。
古来、ユダヤ語の文字では母音が表記されないので、正確な表現は不明です。
一般に、「ヤーヴェ」とか「エホヴァ」と言われています。

「テトラグラマトン」のそれぞれの文字を、順次、母音を付けながら、発音するのが、神名の発声の瞑想法です。
4文字に他の文字を組み合わせることもあります。

これらの発声時には、特定の呼吸法や観想法や姿勢を伴ないます。
また、特定の母音に対して特定の頭の動かし方があったり、文字に対応する身体の部分を振動させたりもします。

具体的には、「YHVH」の4文字に、5つの母音を順につけて唱えます。
例えば、まず、「Y」に「aah」を付けて唱えます。
次に「H」に、次に「V」に、(次に「H」に、)「aah」を付けて唱えます。
その次には「ooh」と付けて唱えます。
そして…といった具合です。

また、各母音に対応する発声を行う時には、頭の動かし方があります。
「o」、「i」を付ける時は、頭を上下に動かします。
「u」の時は、頭を前後に動かします。
「a」、「e」の時は、頭を左右に動かします。

また、4文字のそれぞれで、身体の対応する部位を順に集中し、振動させます。
各部位への集中・振動は、頭から心臓…基底部まで体の中心軸に沿って降ろしていきます。
例えば、まず、頭では、「Y」では頭頂を、「H」では顔の中央を、「V」では後頭部を振動させます。
同様に、心臓では、「Y」では心臓の上、{H}では心臓の中心、「V」では心臓の裏側…といった具合です。

また、4文字に、他のアルファベットの文字を組み合わせて、順に唱えることも行います。
例えば、「Y」+母音に、アルファベットの最初の「A」を付けて、「Aooh Yooh」から順に…といった具体です。

このようにして、波動としての文字(インドで言うところの種子マントラ)を、神の基本属性として体験していくわけです。

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